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「記録」に残されない「記憶」を探る:イノベーション研究のためのオーラル・ヒストリー, Exploring Memories from Narrative: Methodology of Oral History for Innovation Research

翔太郎 山口, Shotaro Yamaguchi, 東勲 金 and Donghoon Kim

No 17-02, IIR Working Paper from Institute of Innovation Research, Hitotsubashi University

Abstract: 本論は、イノベーション研究のためにオーラル・ヒストリーを用いることを想定し、その方法論について纏めたものである。近年になって、社会科学の研究手法の一つとして、オーラル・ヒストリーに注目が集まっている。オーラル・ヒストリーでは、企業の社史や財務資料、政府の公式文書や議事録、あるいは特許や論文といった文字資料には残されていない情報を明らかにすることができる。しかし、実際に理論や仮説の構築のためにオーラル・ヒストリーを用いるうえでは、方法論上の幾つかの固有の問題が生じる。オーラル・ヒストリーの利点を最大限に活用するためには、これらの問題点について理解し、可能な限り対処することが求められる。本論は、単に資料の蓄積や歴史の再構成といった目的でオーラル・ヒストリーを用いるというよりも、理論構築や仮説導出のためにオーラル・ヒストリーをエビデンスの一つとして用いることを想定している。企業家研究などでは、個人のライフストーリーを記述するような伝記的な研究に留まるものも少なくない。しかし、あくまでオーラル・ヒストリーを社会科学におけるエビデンスとして捉えるのであれば、理論的なサンプリング・綿密なインタビューの設計・語りの解釈といったプロセスが必要とされる。また、本論では、オーラル・ヒストリーを用いた実際の研究を幾つか取り上げ、その内容と方法論についてレビューする。それらは企業家研究、政策プロジェクト研究、そして組織慣行の研究である。これらの事例を取り上げることで、オーラル・ヒストリーによってなにを明らかにすることができるのか、イノベーション研究におけるオーラル・ヒストリーでは、どのような点に留意すべきか、ということの示唆が得られるだろう。

Pages: 64 pages
Date: 2017-02
Note: 本稿は、文化庁の委託業務として京都精華大学が実施した平成28 年度「メディア芸術連携促進事業 連携共同事業」である『ゲーム産業生成におけるイノベーションの分野横断的なオーラル・ヒストリー事業』の成果の一部です。
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Page updated 2025-03-19
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