Evaluation of the 2024 Actuarial Valuation
Wataru Suzuki
Gakushuin Economic Papers, 2024, vol. 61, issue 3, 195-217
Abstract:
公的年金財政の “ 健康診断 ” と言われる5年に1度の財政検証が2024年7月,厚生労働省から公表された。注目されるのは,控えめな経済前提値を用いた「過去30年投影ケース」というシナリオにおいても,年金は今後100年間,維持可能(100年安心)という結果になったことである。前回(2019年)の財政検証からたった5年間で,年金財政がかくも大きく改善した理由は,積立金の運用や就業率などが大幅に上振れたことであるが,それで説明できる寄与度は,実は6割ほどにすぎない。残りの約4割は,恣意的に高く設定された1.7%ものスプレッド(積立金運用利回りと賃金上昇率の差)と,流入外国人が大幅に増えることを前提とした人口予測,そして,おそらくは外国人の保険料水準や保険料納付率について非現実的な想定を置いていることによるものである。また,現在の合計特殊出生率(1.20)は,既に今回の財政検証の想定を下回って過去最低を更新し続けており,財政検証が長期的に想定する1.36という水準に戻るかどうかは疑問である。さらに,2057年という遠い将来まで,マクロ経済スライドが計画通りに実施できるという想定も,非現実的と言わざるを得ない。これらの下振れ要素を考慮すると,過去30年投影ケースが100年安心であるという結論は見直さざるを得ず,年金財政を維持可能にするために必要な改革をきちんと行うべきである。今回オプション試算として示された諸改革の実施に加え,マクロ経済スライドの強化策(名目下限措置撤廃やスライド調整率の拡大)や年金支給開始年齢の引き上げなどの給付カット策を直ちに検討すべきである。
Keywords: 年金改正; 財政検証; 100年安心プラン; 年金純債務 (search for similar items in EconPapers)
Date: 2024
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