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90年代韓国農業構造の変容(韓国経済システム研究シリーズ№1)

Kazuo Kuramochi
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Kazuo Kuramochi: Yokohama City University

No 306, Discussion papers from ERINA - Economic Research Institute for Northeast Asia

Abstract: 本稿は農業センサスなど、主として政府公式統計を利用して、1990年代の韓国農業構造の変容を分析、考察したものである。ここで農業構造とは具体的には、農業労働構造、農業生産構造、農地賃貸借関係を意味している。分析結果を要約すると以下の通りである。 第一に、農業労働構造についてである。90年代に入って韓国農業の担い手である農家は、高齢化と家族数の減少が一層進み、農家の過半は60歳以上の年老いた夫婦または一人きり老人となっている。しかし、こうした老齢農家はしだいに営農規模を縮小し、耕作地の一部または全部を賃貸するとか、営農している場合も一部作業を委託するようになっている。一方、世帯主の年齢が40代、50代で機械を装備した農家が農地を賃借したり、作業を受託したりして相当規模の耕作をするようになってきている。 第二に、農業生産構造についてである。耕種作物の栽培面積が全体として減少する中で依然として稲作がほぼ過半を占め続けており、韓国の農業がコメ中心の生産構造であることは変わりない。90年代に入っても果樹、野菜などの成長作物がさらに増え、反対に麦、雑穀などの衰退作物が減っている様相が続いて見られた。畜産においては鶏を除いて飼育農家数は大幅に減少しているが、飼育数は減少せず、増えている場合もあり、大規模飼育化が一段と進んだと言える。 第三に、農地賃貸借関係である。90年代に入っても借地比率が依然として上昇し続けており、しかも耕地規模の大きい農家ほど借地比率が高くなっている。このことは前述のように老齢農家の経営縮小の反面として40代、50代の農家が借地による規模拡大をしていることを示すものといえる。 以上から90年代の韓国農業について総括すれば次のように言える。多数の農家は稲作にしがみつき、一部、企業的な農家が畜産、施設園芸に進出している。稲作にしがみつく多数の農家は高齢化がますます進展している。このため、高齢農家は耕耘、田植え、収穫の作業を委託したり、所有農地の一部または全部を賃貸したりして経営を縮小している。他方、一部の比較的若い労働力を持ち、機械を装備した農家が作業の受託や農地の賃借によって経営を拡大しているのである。 ところで、こうした変化は、すでに80年代から見え始めていたが、90年代に入ってより鮮明になったといえる。この90年代の変化は、韓国経済が国際化する中で農業の市場開放に対応した政策転換に後押しされている面がある。つまり長い間、「耕者有田」=自作農主義を理念としてきたが、90年代半ばに基本的にこれを放棄して賃貸借による規模拡大を積極的に支援していくようになったからである。 本稿は韓国農業構造変化の基本的性格を解明するにとどまったが、この分析を踏まえて今後は、以下のような課題を解明すべきだと考える。 第一に、90年代に韓国農業の重要な担い手となりつつある稲作の大規模農家および畜産や野菜栽培にみられる企業的農家のより詳細な実態である。 第二に、地方自治の進展による各地方ごとの独自な農業に対する政策やその実際についての分析である。 第三に、農業の国際化について、具体的問題として韓中国交正常化、そして中国のWTO加盟の韓国への影響、また現在検討中である日韓自由貿易協定の農業分野の諸問題なども検討すべき課題である。 第四に、上記の農業の国際化に関連して、農業政策のうちとくに農産物価格政策と農産物価格の実際の動きについて分析することである。 第五に、90年代に急進展した韓国のIT化の農業への影響も分析・考察する必要があろう。

Pages: 28 pages
Date: 2003-09
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