EconPapers    
Economics at your fingertips  
 

金融危機が韓国中小製造企業に与えた影響(韓国経済システム研究シリーズ№4)

Ohgyoung Gwon
Additional contact information
Ohgyoung Gwon: Nagaoka University

No 402, Discussion papers from ERINA - Economic Research Institute for Northeast Asia

Abstract: 本稿は、金融危機によって韓国経済の構造が大きく変化するなかで、過去に韓国製造中小企業が抱えていた問題がどのように変化したかを分析の対象としている。具体的には、まず全体の数量的・構造的変化をサーベイし、次いで中小企業問題の最大の要である資金調達の変化を分析した。最後に、過去の資源配分の偏りにもかかわらず、中小企業は一定の成長を遂げた要因として指摘される、下請取引と輸出に関して分析を行った。 まず、中小企業部門の数量的変化で、もっとも目立つものは雇用であった。製造業全体に占める中小企業の割合は2000年の場合74.0%で1997年と比べ約5%も高くなっている。構造的変化としては、負債比率の減少による財務構造の健全性が目立った。負債比率は1997年の305.5%から継続して減少し、2001年には173.7%まで下がっている。 次ぎに、最大の韓国中小企業問題である資源配分の偏り問題を資金調達の変化という観点から分析を試みた。間接金融市場でもっとも大きな資金供給源であった銀行からの調達額は金融危機直後の混乱期である1998年を除いて増加している。2000年調達額は1997年と比べ、95.3%も増えている。ところが、韓国全体の預金銀行からの貸出額に占める中小企業の割合は、大企業への貸出のシェアは低くなったが、家計への貸出が激増したため、低くなっており、1997年の47.0%から2002年に39.9%に7.1%ポイントも下がっている。また、第2金融圏は金融危機による統廃合がもっとも多かった。その影響で、1998年の第2金融圏からの調達額は前年と比べ91.2%ポイントも減少しており、当面はこれらの金融機関からの資金調達は困難だと推測される。直接金融市場においては、1999年のベンチャーバブルと株式市場の急激な膨張により、資金調達額が大幅に増えたが、調整局面に入り金融危機以前の規模に縮小している。市場補完機能としての政府の中小企業金融は、資金調達がもっとも困難だった1998年に信用保証額の規模を大幅に増やすことで一定の役割は果たしたと評価できる。しかし、中小企業向け予算の政府予算に占める割合は徐々に高くなっているものの、日本と比較すれば低い。総括すれば、絶対的には中小企業の調達額が増えており、資金調達は改善されたと言えるが、相対的にはシェアが下がっているため資源配分の偏りが是正されたとまでは言いにくい。 また本稿では、『中小企業白書』にしたがって、中小企業の成長要因の一つを輸出大企業との下請取引にあると考え、金融危機前後の下請け構造の変化をたどった。2000年現在、下請取引比率は6割を上回っており、今後も大企業との分業協力関係は重要だと考えられる。 さらに中小企業自身の輸出の動向についても分析を行い、金融危機以後その産業構造が労働集約的なものから技術集約的なものに高度化したことを確認した。具体的には繊維業の輸出に占めるシェアが低くなり、電気・電子機器や運搬用輸送機械のシェアが高くなった。 以上のように、金融危機により多くの中小企業が倒産という形で市場からの退出を強いられた。しかし、その後の中小企業の変化は、資金調達額が増加したこと、輸出品目の産業構造が高度化したことなど、肯定的に評価できる点も多い。

Pages: 31 pages
Date: 2004-03
References: Add references at CitEc
Citations:

Downloads: (external link)
https://www.unii.ac.jp/erina-unp/archive/wp-content/uploads/2014/09/0402.pdf First version, 2004 (application/pdf)

Related works:
This item may be available elsewhere in EconPapers: Search for items with the same title.

Export reference: BibTeX RIS (EndNote, ProCite, RefMan) HTML/Text

Persistent link: https://EconPapers.repec.org/RePEc:eri:dpaper:0402

Access Statistics for this paper

More papers in Discussion papers from ERINA - Economic Research Institute for Northeast Asia Contact information at EDIRC.
Bibliographic data for series maintained by Hirofumi Arai ().

 
Page updated 2025-03-19
Handle: RePEc:eri:dpaper:0402