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医療保険制度への積立方式導入と、不確実性を考慮した評価

亘 鈴木, Wataru Suzuki and ワタル スズキ

No 378, PIE/CIS Discussion Paper from Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University

Abstract: 本稿は、わが国の医療保険財政を将来も維持可能とするために、医療保険制度に積立方式を導入することを提案し、具体的に、積立方式の下で必要な保険料率を計算した。その結果、現在8.03%の保険料率(公費分を含む、全制度を統合したベース)を、11.79%に直ちに引き上げることにより、2105年まで同一の保険料率で医療保険財政を維持できることがわかった。また、さらに12.11%にまで引き上げることにより、2105年に完全基金を達成することが可能であることもわかった。つまり、積立方式導入の代表的な批判である2重の負担問題は、その負担期間を長期にわたって均すことにより、毎年分の負担をわずか0.32%程度にして解決することが可能である。次に、その保険料率の不確実性を計るために、モンテカルロシミュレーションを用いて、保険料率の予測分布を導出した。賦課方式の保険料率の不確実性の主要因は、医療費変動と経済変動であり、人口変動分は、出生率と死亡率の両者を考慮したとしても、極端に小さい。すなわち、積立方式導入の第二の批判である人口変動の不確実性は非常に小さく、積立方式導入の根拠が確かなものであることが確認された。最後に、積立方式導入の場合の保険料率の不確実性を評価した。積立方式導入のうち、5年ごとに最終年の均衡が保たれるようにその後の保険料率を調整する方式(5年調整方式)では、予測分布の変動幅は賦課方式の場合とほとんど変わらないことがわかる。一方で、積立金の誤差を最終年に遡って調整する方式(最終年調整方式)では、積立方式の保険料率が賦課方式を上回る2037年以前の保険料率の不確実性を小さくし、一方で、2037年以降の不確実性を大きくするという操作が可能である。こうした調整方式を組み合わせて、保険料率の引上げ幅と不確実性とマネージすることにより、積立方式導入に対する第三の批判、つまり改革当初の保険料率が上がり、それに直面する世代の納得が得られないという問題を克服できる可能性があることが示唆される。

Pages: 23 pages
Date: 2008-05
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