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年金債務の評価

修 山口, Osamu Yamaguchi and オサム ヤマグチ

No 176, Discussion Paper from Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University

Abstract: 2000(平成12)年度から退職給付の新しい会計基準が導入され、国際的な基準に準じたルールにもとづいて、企業年金の債務評価が実施されることになった。本稿は会計基準の導入によって提起された年金債務の評価問題について、その考え方や方法などを改めて考察したものである。わが国の退職給付に係る会計基準では、各々の退職給付制度の労働債権としての法的な位置付けの問題に立ち入ることなく、「退職給付は企業の債務である」という認識からスタートしている。そして、退職一時金や企業年金などの退職給付を包括的にとらえ、統一的なルールによって会計処理し、財務諸表に表示するアプローチがとられた。その結果、退職給付の会計基準は従来の会計の枠組みの中で捉えられ、新たなフレームワークにもとづくものであるという視点を決定的に欠くことになった。本稿ではわが国における退職給付制度の実態を直視し、即時支給型の制度を一旦据置給付型に変換した上で議論の展開を図るという方法論が採られている。そのように変換を通すことにより、わが国の退職給付制度が長期勤続優遇のバックローディング型だとする説が必ずしも正しくないことが判明してくる。そして、わが国では取り消し得ない強い受給権の概念が存在しないことを出発点にして、法解釈的に債務認識の問題を掘り下げ、退職給付に係る受給権、期限付受給権、受給期待権などの権利の濃淡にもとづき、VBO、ABO、PBOに近い債務概念の整理を行っている。その上で、支給倍率基準の配分算式の中に給付実行までの時間的距離(=据置期間)に対応した再評価率という概念を持ち込むことによって、国際的なルールに反することなく自己都合要支給額がVBOに該当するというごく自然な結論に到達している。最後に、投資家に対する適切な情報提供と並んで、わが国の退職給付の実態を踏まえた上で債権者たる従業員の受給権保護を図るという新しい枠組みにもとづき、新たな視点から退職給付会計の再検討を求めている。

Pages: 37 pages
Date: 2003-09
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