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日本経済の特殊性―展望―

大来 洋一
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大来 洋一: National Graduate Institute for Policy Studies

No 10-01, GRIPS Discussion Papers from National Graduate Institute for Policy Studies

Abstract: 日本経済は特殊な経済だとよく言われる。本当なのだろうか。本ペーパーは、日本経済は特殊ではない、普通だ、ということを示そうというものである。 本ペーパーは、特に日本の企業内や企業間にみられるシステムや慣行が特殊なのかどうかをとりあげる。長期的雇用、年功賃金、日本的コーポレート・ガバナンス(企業と株主の関係)、メインバンク、企業間の長期的取引、といった慣行は、特殊なものであり、歴史的に決定付けられた固有のものであるという見方がある。しかしこれには経済的合理性があることも広く認められている。また、日本のシステムは特殊であるとしても、ほかの国々も特殊であり、日本だけが特殊なのではない、という見方もある。一見すると異なるこれらの見方も実はたがいに矛盾、対立する見方ではない。 日本経済は基本的に市場経済であるので、新古典派の想定に従えば、多数の企業や家計が存在し、完全競争が成立しており、企業は利潤を極大化し、家計は効用を極大化し、情報は完全で取引にコストはかからない、という状態でなければならないということになる。そのように考えれば現実の日本経済は特殊だ、という話になってしまう。しかし、現実の経済はいずこの国においても、このような新古典派の前提から乖離している。そしてその乖離の仕方はそれぞれの経済において異なる。 近年では、「比較制度分析」のように、新古典派で前提とされていた仮定を緩めて、経済学の範囲を大きく広げる試みがなされている。そうした「試み」が試みではなく、主流の一部になってくれば、主流の経済理論によって日本経済は説明されうる、ということになる。そうなると、日本経済は普通であるといってもおかしくない。資本主義の多様性を認めよ、という比較制度分析の主張は、日本は特殊である、という議論に対する有力な反論であった。 また、日本的システムの大きな部分は高度成長期に形作られたものである。それ以前からの伝統、文化、社会的条件、政策などが影響をもたなかったというのではないが、高度成長期に形成された特徴が日本的システムといわれるものの根幹をなしている。

Pages: 53 pages
Date: 2010-01
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