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年金の財政検証: 2014年検証結果と今後の課題

憲之 高山

No 632, CIS Discussion paper series from Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University

Abstract: 1. 2014年財政検証の主要な結果は、つぎの7に要約される。すなわち、①公的年金の財政に関するかぎり、その状況は「お尻に火が付いた状況」ではない。②デフレにおけるマクロ経済スライド休止条項は将来にわたる給付水準の実質カット分を大きくしてしまう。③マクロ経済スライドの発動要件が現在、ようやく整いつつあり、一旦それが発動されると、その年金財政健全化効果は大きく、年金財政の持続可能性はかなり高くなる。④ただし、年金財政の健全化は年金水準の実質的切り下げという犠牲なしには達成されない。とりわけ基礎年金水準の大幅な切り下げを伴う(年金財政は破綻しないが、給付水準は大幅に下がる)。⑤基礎年金の大幅な切り下げには複数の要因が作用しているものの、国民年金財政が元々脆弱であったことが、その背景にある。⑥したがって、国民年金の財政健全化に貢献するような施策、たとえば短時間労働者の厚生年金保険への適用拡大や保険料拠出期間の延長等を実施することが今、強く求められている。⑦出生率が上昇したり、女性や高齢者の労働参加が一段と進んだりすると、年金の財政基盤はその分だけ強固になる。2. 年金に関する財政検証フレームが従来のままでよいのかについても再検討する必要性が高まっている。たとえば、①標準的な世帯を今後とも想定するのか、それとも標準を個人ベースに切りかえるのか、②最低保証の年金水準に関連して、基礎年金についても独自の水準を新たに設けるのか、③所得代替率の分子を、分母に合わせて手取りベースに切りかえるのか、④マクロ経済スライドによる報酬比例部分の水準調整が終了した後に基礎年金の水準調整が継続している場合、報酬比例部分について新たな水準調整を追加する必要はないのか、⑤基礎年金拠出に係る計算方式を頭割りから所得比例に変更する必要性が大きい中で、その具体案を検討しないのか、等々。財政検証フレームそのものについても、その見直しに関する議論が開始されることを期待したい。3. 2014年8月時点では未公表となっている資料が少なくない。『2009年財政検証結果レポート』並みのデータ公開が待たれている。

Pages: 20 pages
Date: 2014-09
References: Add references at CitEc
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