製品開発におけるアイデア創出,コンセプト策定,および人材マネジメント:日中韓比較
康 都留,
宜穂 徳丸,
賢太郎 中島 and
光啓 福澤
No 653, Discussion Paper Series from Institute of Economic Research, Hitotsubashi University
Abstract:
本稿は,日中韓3か国の製造業およびソフトウェア業の企業に対する質問紙調査データの分析結果である.この調査の最大の特徴は,製品開発における製品のアイデア出しや製品コンセプト策定などの「上流工程」(フロントエンド)と人材マジメントとの関連に焦点を絞ることにある.このように焦点を絞ったのは,そこに従来の研究では明らかにされてこなかった空白領域があり,なおかつ実務的にも製品開発の成果を決定づける重要なプロセスにほかならないからである.この調査で得た特に重要な論点を,日本を中心にまとめると以下の通りである.(1)日本において,製品開発の全工程を一貫して製品開発エンジニアが主導する割合が,3か国の中で最も高い.(2)上流工程主導者の職務経験に関しては,マーケティング・営業経験者の割合が3か国の中で最も低い.(3)製品企画担当者の位置づけについては,「技術者に近い」とする回答割合が3か国で最も高く,「経営企画に近い」とする回答割合が3か国で最も低い.(4)開発した製品の市場での成功と失敗とが処遇に反映される度合は,3か国中で最も低い.また,長期的インセンティブ付与(=ポストによる処遇)に重点が置かれている.以上の結果の含意は,次のように考えられる.(1)調整作業がより多く必要になると考えられるインテグラル・アーキテクチャ製品の場合,同一の主導者が一貫して開発全工程を主導する開発スタイルは有効である.したがって,日本企業がインテグラル・アーキテクチャを堅持する限り,この開発スタイルを不用意に変えるべきではない.(2)しかしその一方で,日本企業の開発スタイルは,負の側面をも持つ.すなわち,製品開発の全工程を一貫して製品開発エンジニアが主導し,上流工程主導者にマーケティングもしくは営業の職務経験が「ない」という状況は,上流工程に市場ニーズの情報が入りにくい構造になっていることを意味する.(3)したがって求められる改革は,「技術もわかる」マーケティング担当者と「市場もわかる」製品開発エンジニアの育成であり,その協業体制の構築である.
JEL-codes: M11 M12 M50 (search for similar items in EconPapers)
Pages: 40 pages
Date: 2016-12
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