バイオスタートアップの新規株式公開と資金調達
裕司 本庄,
貞男 長岡,
健太 中村 and
由美 清水
No 15-01, IIR Working Paper from Institute of Innovation Research, Hitotsubashi University
Abstract:
本稿は,バイオテクノロジー分野におけるスタートアップ期の企業(以下,「バイオスタートアップ」と呼ぶ)のうち,とくに,株式公開企業 (public firm) を対象に,ベンチャーキャピタル (venture capital; VC) からの資金調達および新規株式公開 (initial public offering; IPO) を通じた資金調達の実態を分析する.本稿で得られた知見は以下のとおりである.(1) バイオテクノロジー分野では,研究開発投資の規模が大きく,その不確実性が大きいことから,VC はバイオスタートアップの資金調達に大きな役割をはたしており,また,比較的に初期の段階からVC による投資がみられている.(2) 一般的にIPO は市況の影響を受けやすいが,バイオスタートアップのIPO は市況と関係なく継続的にみられている.ただし,(株価)時価総額は市況によって大きく変動しており,2002 年から2003 年および2012 年後半から2013 年は他の時期よりも相対的に高い時価総額となっている.(3) バイオスタートアップへの投資は規模が大きくリスクも高いことから,VC がバイオスタートアップに投資する場合,段階的投資やシンジケーションを利用する傾向がみられている.バイオスタートアップは平均5 回の投資ラウンドを経験しており,また,平均15 社のVC がバイオスタートアップの投資に参加している.ただし,投資ラウンド数やシンジケーションの大きさが必ずしも良好な時価総額につながるとは限らない.(4) IPO は,バイオスタートアップへの投資に対する資金回収および株式市場へのアクセスを通じた資産規模拡大の機会として機能している.(5) バイオスタートアップは,IPO を通じて研究開発を拡大するが,IPO が短期的な売上高の改善につながっていない.日本の新興市場では,赤字であっても成長性のある企業のIPO を認めることで,こうした企業の市場での資金調達やVC による投資の回収につながっており,こうした点で新興市場の役割が機能している.他方,バイオスタートアップについて,投資ラウンド数やシンジケーションの大きさが必ずしも良好な時価総額につながらないことや,市況と関係なくIPO がみられることは,日本のVC による投資能力の限界を示唆している.将来的に,バイオテクノロジー分野で効率的にイノベーションを実現していくためには,リスクを分散できる産業組織の進化が大きな鍵を握る.そのためには,バイオスタートアップおよびリスクキャピタルの相互の拡大が求められる.こうした好循環を形成していくうで,バイオスタートアップに資金を提供するVC の能力の強化は重要な役割をはたすと考えられる.
Pages: 48 pages
Date: 2015-01
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